「真夏の怪奇現象」
◆ 真夏の怪奇現象 館長 安藤 薫
職場で、机を挟んで職員と3人で打合せをしている最中の出来事。
「私はこういう風に考えているんだけど」と発した直後、机の右端から落ち着いた女
性の声で「そんな風に考えていたんですね」と、返答してきた。
「だ、誰?・・」3人で顔を見合わせ沈黙し、辺りを見渡したが、誰もいない。
「もしかして、これ?」と、私のスマホを見た。
Siri(シリ)が反応したのだった。
Siriとは、iPhoneやiPadに組み込まれた人工知能を用いた音声アシスタント機能で、
「Hey Siri」と呼び掛け話しかけると答えてくれるという、大変便利な機能だ。私も出
張の際、場所がわからず2度ほど呼び掛けたことはあった。が、最近は使うこともなか
った。ましてや、呼び掛けてもないのに打合せに参加してきたことにびっくりした。
周りの人に聞いてみると、経験のある人が何人かいた。学会で東大の教授が質問した
際、隣の席の人のスマホが反応し、「それは良い質問ですね」と答え、爆笑したという話
も聞いた。便利な反面、不便なことも多い世の中になったと思う。
最近では家電が良くしゃべる。エアコンも毎日、今日の電気代を教えてくれ、最初は
感動していたが、最近ではちょっとしつこいと思うようになってきた。
職場の空気清浄機は、急に鼻歌を歌いだしたり、何回かに1回関西弁をしゃべる。
視覚に障害のある人にとっては、音声機能付きの家電等が増え、生活も便利になって
いくと思う。そして、それは福祉という枠を超え、誰もが楽しめるユーモアが含まれて
きているのかもしれない。が、今回のスマホの誤動作には正直びっくりした。いつから
私たちの話を聞いていたのだろうか?(機械なのでそんな心配はないらしいが。)
兎にも角にも、進化してきた機器の誤動作をとやかく言う以前に、機器を誤操作せず
に使いこなせるようになることが先決だと感じた今年の夏だった。