研修では、差別を無くすための「障害者差別解消法」が求める「合理的配慮」とはどういうものなのか、そもそも「障害」とは何なのか、障害当事者、そして当事者家族でもある障害者相談員の皆さんに、改めて考えていただきました。
最初のワークは「『障害とは○○である』の○○に当てはまる言葉を30秒で考える」―でした。「心身の機能の障害によって、生活の中で妨げになるもの」「人と人が関わった時に、間に生まれるもの」などの意見が出ました。
研修の中盤では、障害のある人と無い人が全く逆転した世界が描かれたビデオを視聴しました。障害のないサラリーマンが、訪問先の会社の受付へ行くと手話で対応されたり、読めない点字資料を渡されたり、一息つきたくて喫茶店に行くと「一人では入れない」と拒否されたり、車いすの人が次々にスロープから乗車するバスに乗ろうとすると「立ってつり革につかまるなんて危ないから駄目です。規則だから!」と乗車拒否されたり―逆転の世界は、つまり、現実の世界で障害のある人たちが置かれている状況です。障害のないサラリーマンが感じた数々のバリアは、健常な人を対象としてつくられた現実社会の中で、障害のある人たちが実際に感じている「壁」なのです。
土岐氏ご自身も、24歳の時に仕事中に左足を切断する事故に遭い、義足をつけて生活するようになって初めて、地域社会の道路、建物、あらゆるものが健常な人を対象にしてつくられていること、社会の中の様々なバリアを実感されたそうです。
障害は、個人の心身機能に起因するもの(障害の個人モデル)ではなく、社会の側にあり(障害の社会モデル)、社会が作り出した社会的な障壁を取り除くことは社会の責務であることを再認識しました。
様々な障害や多様性についての理解や社会モデルの考え方が浸透し、それが当たり前になることで、誰もが住みやすい世の中になっていく。地道で月日はかかるけど、地域社会を変えていくために、それぞれが出来ることを考え、それを実行していきましょうという土岐氏の言葉に、背筋が伸びる思いがした研修でした。
※この度、土岐達志様より(公財)北九州市身体障害者福祉協会に障害福祉の向上のためのご寄付を賜りました。ご厚意に心より感謝申し上げます。