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しんしょう協会 (北九州市身体障害者福祉協会)

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音が見える!「エキマトペ」

 駅のホームに立って、聞こえてくる「音」に意識を集中してみると、色んな音が聞こえてきます。

 「間もなく2番線に○時○分発、快速列車○○行きが到着します」「黄色い線の内側に下がってお待ちください」「列車の遅れをお知らせします」…などの電車情報のアナウンスはよく聞く音です。
 でも、ホームで聞こえる音はそれだけではありません。
 電車の到着を知らせる「プルルルルル」、電車がレールの継(つ)ぎ目(め)を行く時の「ガタンゴトン」、通りすぎる時の「ヒューン」という風の音、扉の開閉時の「プシュー」…駅って音で溢れているんですね。でもこれらの音の多くは、聴覚に障害がある人には届いていません。

 

 2022年6月から12月にかけて、JR上野(うえの)駅(東京都台東(たいとう)区)で、ある興味深い実証実験が行われていました。ホームに設置されたのは、音を視覚化する装置『エキマトペ』。

 ホームに流れるアナウンスや電車の音をマイクが集音すると、AIが即座に分析して文字化し、事前収録したJR東日本の駅員さんによる手話動画と共にディスプレイに表示されます。専用マイクを使うと、駅員さんがその場で話した内容もディスプレイに表示されるのですが、驚くのは、文字の形(フォント)が話の内容に応じて変化すること。感情豊かなフォントが話のニュアンスまで伝えてくるのです!
 電車やベル音などの環境音は「ガタンゴトン」「ルルルル」などのオノマトペ(擬音語・擬態語)で表現され、それぞれの音のイメージに合わせてデザインされた文字が、「何の音か」がわかるイラストと一緒にアニメーション表示されます。


出展:富士通株式会社

 電車の動きに合わせて「ビュウウウウウウン」「キンコンカンコーン」「ポロンポロン♪」などのオノマトペがディスプレイ上でポップに動き、アナウンスの文字の横に手話をする駅員さんが現れる…。見ているだけでも楽しいこの『エキマトペ』は、川崎市立聾(かわさきしりつろう)学校(がっこう)の子どもたちが、「未来の通学をデザインしよう」というテーマで考えた案を元に、富士通、JR東日本、DNPといった複数の企業がプロジェクトを立ち上げて開発したものです。プロジェクトは「この実証実験を通じて、聴覚に障害のある人をはじめとして、駅を利用するお客様へ共通の体験を提供することで、ダイバーシティとインクルージョンへの相互理解の促進を目指します」―としています。


出展:富士通株式会社

 「ビュウウウウウウン」「ヒューーーン」「ピポンピポン」「ガダンゴトン」…聞こえていても今まで意識することもなかった「音」たちに、『エキマトペ』を通して出会った気がします。「ご乗車ありがとうございます」と手話をする駅員さんを見て、「あぁ、そうか。この『ありがとうございます』も、聞こえない人には届いていなかったのだな」と気づきます。

 子どもたちの「あったらいいな」を、知識と技術で企業が形にした『エキマトペ』―。
 こんな試みが全国各地で行われたら、きっともっと誰もが暮らしやすい世の中になるに違いありません。


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