6 この本、おもしろかった!~わたしの一冊~
点字図書館を利用される皆さんがつなぐこのコーナー。前号の岡部さんから、バトンが
渡された「北点図お蔦」さんに、今回はインタビュー形式でお聞きしました!
******* ******* *******
―では早速ですが北点図お蔦さん、最近読んだ本で面白かった本、ありますか?
最近になって、昔の古い本が読みたくなって…。きっかけは「名せりふ」。
世間でよく知られている「名せりふ」ってあるでしょう?「別れろ切れろは芸者の時にいう言
葉 今のあたしには死ねとおっしゃってくださいな」なんていうの。
その「名せりふ」をたどって読んでみたのが泉鏡花の『婦系図』。いやあ、なかなか味のあ
る作品でしたよ。
巾着切り、いわゆる「スリ」だった早瀬主税という少年が、「真砂町の先生」と呼ばれる
人に拾われたのち、更生して立派な書生さんになるのだけど、お蔦という芸者と恋仲になって
ね。晴れて夫婦になったのだけど、それを知った先生が、「将来有望な主税と芸者なんて不釣
り合いだ」ってことで、二人を別れさせるわけ。
お蔦も泣く泣く身を引いたのだけど、後になって先生は気づくんですね。「芸者なんて」と
思っていたお蔦の一途な想いや人柄に。
それで「自分が間違っていた!」って言って、慌てて二人を復縁させようとするのだけど、
時すでに遅し―。お蔦は結核にかかっていたんですね。
駆け付けた先生が「ぼくを恨んでくれ」と詫びる中、静かに息を引き取ってしまうという…、
主税にも会えずにね。
あの「名せりふ」の裏にこんなストーリーがあったのかって、ひじょうに興味深く読みまし
したよ。
―『婦系図』は点字で読まれたんですよね?
最近は、点字データをダウンロードして、音声で聴くことが多いですね。
機械の音声だと一定なので、逆に自分の感情で読めるようなところがあって…。
―他に今、読んでみたい本というと?
泉鏡花だと「滝の白糸」も読んでみたいですね。「名せりふ」でいうと「しがねえ姿の
土俵入りでござんす」で有名な戯曲「一本刀土俵入り」とか「瞼の母」にも興味が湧いてい
ます。
―突撃インタビューにもかかわらず、「名せりふ」の妙を熱く語ってくださった北点図お
蔦さん、ありがとうございました!
さあ、次のバトンはどなたへ―?