ケ・セラ・セラ
ル)結婚して30年以上東京暮らしだったけど、私の母の介護を機に、私の地元の北九州に越してきたの。すぐに区役所に行って、装具が買える薬局を紹介してもらったけど、その薬局がよく移転してたから、追いかけてあちこち買いに行くのは大変だったね。
光)車で買いに行ってたな。今は届けてくれるようになったけど。
ル)装具もずいぶん良くなったよね。昔は接着も良くなくて2、3日で剥がれるか、破れるかでしたよ。公的な補助もなかったから全部実費だったしね。
光)50年近く前の、ほんとに何もなかったところから始まっているからなあ。
ル)以前は、出かける時はいつも装具の予備を3、4枚は持って行ってたけど、最近の装具は性能が良くなったから、余分に持っていくことをしなくなっちゃったわね。災害の時のストックは考えているけど…。
光)車にはいつも装具と洗浄綿と尿もれパッドなんかをセットにして積んでおいたけどな。
ル)そう。でも実は、今月いっぱいで車の免許を返納すると決めてて―。いつかはそうしないといけないものだしね。これから先のこともあまりクヨクヨ考えてないけど、心配なことと言えば、主人が寝たきりになったりして私も思うように動けなくなった時かな。性格的に主人はデイサービスには行かないだろうから、訪問看護で装具の貼り替えをやってもらえるのかな、とかね。装具の貼り替えは、ずっと私がやってきたし今のところは、私が最後までやるつもりでいるんだけど、もしもの時はどうなるかなって…。
光)誰もいなかったら、自分でやるよ。この人が旅行で居ない時なんかは、やってたんだから。
ル)そうね。斜めについちゃってたけどね(笑)その時はその時ね。そもそも、結婚して2ヶ月で手術して、3ヶ月間入院して、もうずうっと「人工膀胱」が当たり前の生活をしてきたでしょう?それも良かったかな。なんだかもう全部受け止めちゃってるから。大変と言えば大変だったかな…忘れちゃったね。二人で深刻になることもなかったしね。
光)なる必要がないよな。病気だって、誰も好き好んでなるわけじゃないし、考えたってしょうがないんだよ。
ル)ずっと「ケ・セラ・セラ」よね。いや、落ち込むこともあるのよ(笑)あるけど、2日持たないわね。心配事に引っ張られて眠れないことだって私にもあるけど、2日くらい経つと「考えてもしょうがないよね」「なるようにしかならないよね」って―。