点字図書館を利用される皆さんがつなぐコーナーです。前号の有吉さんから、マチネの洋子さんへバトンが渡されました。それでは、マチネの洋子さん、お願いします。
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〇私のお勧めの一冊 『駅に泊まろう!』
豊田 巧著『駅に泊まろう!』、この本のタイトルに魅かれ読んでみることにしました。
主人公桜岡 美月はブラックな職場だった居酒屋チェーン店を退職し、亡き祖父・徹三が経営していたコテージを譲り受けることになりました。鉄道好きな美月は、飛行機よりも新幹線で北海道を目指すことに決め、高級なグランクラスに乗り込み、車内で豪華なお弁当やビールを楽しみながら、新函館北斗駅に到着します。
グランクラスの新幹線内の様子はとても羨ましくて、私も乗ってみたいな、そして北海道の風景は、以前北海道を旅した時のことを思い出しながら読み進めました。美月は初めて訪れた北海道の大きさに戸惑いながらローカル線を乗り継ぎ、田舎の無人駅『比羅夫駅』に辿り着きます。しかし、どこにも小さなペンションやオシャレで可愛いゲストハウスらしきものは見つかりません。なんと、駅そのものが「コテージ比羅夫」だったんです。大きなショックを受けますが、他に帰るところもなくコテージで生活していくことを決断します。
「コテージ比羅夫」では電車が通過するホームで、牛、豚、羊などの肉類、海老やししゃもなどの魚介類、トウモロコシやナス、カボチャ、玉葱などの新鮮な野菜類を使ったバーベキュー!美月が勤めていた居酒屋では見たこともない北海道の美味しい食事に舌鼓を打ち、キンキンに冷えたサッポロクラシックビールを飲んでいるうちに心を開いていきます。
コテージ比羅夫は室内にお風呂が無く、ホームの先にお手製の浴槽が設置されています。目覚ましをかけなくても、列車が到着する汽笛の音で目覚めることができます。駅のホームで食事やお風呂、なんだかとっても楽しそう!こんなコテージ本当にあるのかしら?文中に「次は小樽駅」と出てくるので、小樽に住んでいる友人にメールをしてみました。「こんな本を読んでるんだけど、本当に駅に泊まれるの?」と尋ねてみました。すると小樽の友人はすぐに返事をくれ「地元にいて全く知らなかった。改めて調べてみて本当にあって驚いた」と教えてくれました。
文中には、「訳アリな客」や「一人で来ているのに何故か二人分の宿泊費を払った客」のエピソードが書かれています。
コロナ禍でどこにも行けなくなり、淋しい近頃です。この本を読んでいると北海道の豊かな自然や美味しそうな食材に心が躍ります。もう一度行ってみたいな北海道、そして泊まってみたいな「コテージ比羅夫」に!
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北海道の豊かな自然が目に浮かび、旅行しているような気持ちになれる本の紹介、ありがとうございました。マチネの洋子さんの明るく躍動感のある紹介文を読んでいると、気持ちがパッと明るくなりました。実際に色々な場所に行くことが難しい中でも、本を読むと色々な場所に思いを馳せ、想像することで、楽しい気持ちになれることを再認識できました。
マチネの洋子さん、ありがとうございました!
(担当:田代)