「膝に来て模様に満ちて春着(はるぎ)の子 中村草田男(なかむらくさたお)」
胡坐をかいて座る和装姿の男性。その上に、花模様の晴れ着を着た小さな女の子がちょこんと座っています。きれいに結い上げられた髪に、髪飾りもたくさんついています。
男性はお猪口を持ち、頬をほんのり赤くして楽しそうに笑っています。
我関せずの女の子は、胡坐の上で足を投げ出し、みかんを夢中で食べています。着物の裾ははだけ、小さな足の裏が覗いています。
膝に甘えてくる我が子が、今日は華やかな晴れ着に包まれている―幼子に目を細めるお父さん。華やいだ景色に、新年の清々しい空気まで感じ取れます。
新年を、新調した綺麗な着物で迎えることを「着衣始め(きそはじめ)」と言うそうです。
着物が普段着だった時代とは違い、こんなお正月は少数派かもしれませんが、一年の始まりを、襟を正してきちんと迎えようとする日本人らしさは、大事にしたいと思います。
それにしても、綺麗な着物の上でみかん…。私なら全力で止めますけど!(笑)
(裏表紙 イラストと文 職員A.O)