9 この本、おもしろかった!~わたしの一冊~
点字図書館を利用される皆さんがつなぐコーナーです。前号の村田さんから、バトンを受
け取ったのは、妹尾さんです。たくさんの本を読まれている妹尾さんの、とっておきの本を
紹介していただきます。
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読書好きな私はおすすめ本を聞かれる事が多く、音読初心者にはマンガやドラマで映像化さ
れた物、障害初心者には短めの物や障害当事者が書かれた物、今までは相手の性格や年齢で選
んできました。
さて今回は何にしよう?と、色々と考えた結果、うまくいかない時や悩む時、何度となく繰
り返しに読んでしまう私のバイブル本を紹介します。
「みをつくし料理帖」髙田 郁 著 全10巻
一部ドラマ化されましたが、シリーズ10冊の長編です。読んでいた当時は新刊が待ち遠し
かったのですが、今は完結していますので全部読めます。
江戸時代の女料理人の話で、数々の試練にも負けず料理の道を進んで行く話です。と、すご
ーく簡単に書きましたが、この本は人を思う大切さ、迷った時の向き合い方等改めて気付かせ
てもらいました。
主人公や登場人物を襲う数々の試練に心が痛み、読み進めるのが辛くなる所が何度もあるの
ですが、物語の根本にあるのは、主人公の運命として作中に出てくる雲外蒼天です。
どんな厚い雲の上にも、耐えて精進をしていけば、広く澄んだ青空が広がっています。
これだけを信じて是非読んでみて下さい。時代小説は剣豪物しか売れないと言われていた中
で、著者は同じ刀なら人を切る刀より食べ物を切る刀にしたいと考えたとか。作中の料理は、
全部作ってみるらしいですよ。それに、江戸の文化や食の取材もしっかりしていて、それぞれ
巻末にはレシピも付いています。冷蔵庫もレンジも無い江戸時代に、その日仕入れた旬の味を
生かしていただく、普通の事なのに、季節をとわず一年中食べられる現代ではとても難しい気
がします。美味しそうな想像が沢山出来ますよ。
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妹尾さん、貴重なお話ありがとうございました!